夢の中の御伽噺
夜の黒が空一面に広がり、星の光りの変わりに光り出す外灯が煌めきだし、
昼から夜の雰囲気へと変わっている街を一人、浮かれた気分で歩いて行く。
リズムカルに歩けば体にぶつかり、
傾いた体は誰か知らない人の腕がぶつかり、
謝りを入れる前に睨まれる。
自分や仲間以外を受け入れない街を軽蔑しながら過ごしていた自分を忘れ、
華やかに見える街を軽やかな足で通り抜け、
移動をする為、地下鉄へと続く階段を下りて行く。
冷たく、刺す様な雰囲気も気分1つで、正反対に変わる。
繰り返されて行く毎日も満足出来てしまう。
退屈でつまらない日々も楽しく思える。
昨日までの暗い気分が消え去り、明るく楽しい日々に変わっていく。
薄暗い地下道を歩きながら嬉しさのあまり、靴音をワザと鳴らし、
自分の存在を周りに知らせる。
自分はココに居るのだと。
階段を下り続け、フッと顔を上げれば、
周りに自分以外に誰も居ない事に気付くけば、
浮かれた心が消え、何処からでもなく寂しさと不安が襲われ、
逃げる様に、足を速める。
階段を下りる足は音を鳴らさず、無音の世界に焦り、
ようやく見えて来た終わりに、残り数段の階段を飛び降りた。
着地を知らせる、地面の衝撃も音も無く、
落ちて行く感覚に目を閉じ、
全身に力を入れ闇へと消えていった。
落ちていく意識は闇の奥底から光りが見える場所へと変わり、
弾き出される様な衝撃を受け、強く目を閉じ暫くして、
恐る恐る目を開ければ、蛍光灯に光りが目に入り、
眩しさに瞬きを繰り返す中、耳から音が入り意識を集中させるが、
朦朧とするばかりで、ぼやけて見える世界の中で、
黒い影が見えると、次第に意識がハッキリしてきた。
長い亜麻色の髪
優しいそうな雰囲気
ダ・・レ・・・・?
定まらない視界は、ぼやけながら影を写す。
心地良い温度に包まれ、意識が眠りへと引き込まれていく中、
「いつまで拗ねている気なの!
いい加減、気の長いお母さんでも怒るわよ・・」
口端をひく付かせながらの言葉に、飛び起き、
「ゴメンナサイ!
今すぐ起きます!」
涙目になりながら、布団から出れば、
「朝ご飯が出来てるから、早く下りて来てね」
にっこりと笑い、部屋から出ていく姿を見送り、
起きたばかりだと言うのに、
勢い良く衣装タンスに向かい制服へと着替えた。
上着を手に持ち、等身大の鏡で身嗜みチェック
「よし!」
リボンの歪みを直し、力の篭った声の後、
フッと違う考えが過ぎる。
私、社会人じゃなかったけ?
無意識に着た制服は学生を象徴する物で、
今までは通勤に着て行く服を悩みながら選び着ていたはずだった。
どうして?
疑問に思わず手が伸び、
身に纏った制服を鏡に写し続けていれば、
顔が幼くなってる・・?
大人になっても学生と間違われてきた顔に、
更に幼さが加わった顔を見続ければ、
手や足までもが短さを感じ、違和感が溢れ出てくる。
なんで!?
なんで、若返ってるの!?
あまりの驚きに頭を抱え、座り込み、
「落ち着いて!
取りあえず、落ち着こうよ!」
誰も居ない部屋に自分の声が響く。
「マンガや小説じゃないんだし、若返るワケないじゃない!」
声に出し言葉にすれば、少しだけ落ち着き、違う考えが浮かぶ。
そうだよ。
これは、夢だ!
自分は寝てて、夢見てるんだよ。
「そうだよねぇ〜
そうじゃなきゃオカシイよねぇ」
自分の考えと耳から入ってくる声に納得し、
立ち上がり朝食が出来ているキッチンへと向かう。
今日のご飯はなんだろう?
人が作ってくれるゴハンって久し振りだなぁ〜
鼻孔を擽る匂いは、空腹を訴え、足早にキッチンへと入れば、
目玉焼きに味噌汁にご飯。
理想な朝食の数々に口端が緩み、並べられた席に座り
「いただきます!」
勢い良く合掌し、切れ良い音を鳴らし、
箸と同時に味噌汁の椀を持ち上げ、熱さに気を付けながら、汁を飲み込んだ。
「美味しい・・・」
久しぶりに感じる手づくりの味に、
ホッと息と同時に零れ落ちた言葉に笑みが返り、
「もう、拗ねてないの?」
柔らかく問われた言葉に首を捻り、黙っていれば、
「いゃぁねぇ〜
転校して友達と離れるのが嫌だって、
怒って、拗ねてたじゃない」
お父さん、慰めるの大変だったんだから。
コロコロと笑いながらの言葉に驚き、
持ち上げていた箸を落としかけるも、なんとか持ち直し、
「え?
て・・んこ・・・う?」
なんとか絞り出した声に、
「やだ、まだ寝ぼけてるの?」
微笑みながら告げられた言葉に、人生初の声も出ない驚きを体感した。